中型バイク試乗記:その2【YAMAHA YBR250/125】
久々のインプレ的な日記を書きます。
ヤマハが(というかYSPが)販売を開始した250cc/125ccのオンロードモデル、YBR。
■公式サイト→YBR250 2011年モデル|ヤマハバイク専門ディーラー【YSP|ヤマハスポーツプラザ】
「中国製のアジア向けバイクだろー?」
「Ninja250RやCBR250Rに比べてショボイんじゃね?」
とか思った人。ちょっと裏まで来なさい。
結論から言うと、これ全然アリなバイクだと思います。
■YBRを語る前にちょっと前置き。
実は先日、旧セロー(225ccの方)をお借りしてオンオフ続けて500km以上走る機会がありました。二泊三日のオフロードキャンプツーリングだったのですが、トレールの王者セローだけあって、オフでの疲れなさ、乗りやすさは流石のものでした。
で、もうお腹いっぱいオフを走ったので、帰りしなちょっとオンを走ったんですよ。100kmほど。
走ったのは大館から十和田湖に抜ける樹海ライン、奥入瀬渓流、そして八甲田。天気も良くて最高でした。
この時気づいたのが、「セローのエンジンでオンロードは実は楽しい」ということ。
といっても、飛ばして楽しいという話ではありません。
速度で言うとだいたい50〜60km/hくらいでしょうか。そのくらいの速度域が非常に良い塩梅なのです。
大体どんなバイクでも乗ってて楽しい速度域があると思います。原付二種なら30km〜50km。リッターSSなら200kmオーバー。数値は違えど「このバイクはこれくらいが丁度良いな」というスピード域があるもの。個人的にはセローの場合それがオンでは50〜60kmくらいと思います。速度違反の心配をすることもない速度域です。低速からドコドコッと来るトルクは特有の優しさ・扱いやすさがあり、長時間乗ってて疲れません。しかも30km/Lを余裕で超える好燃費。
セローを買ってもオフは走らず、オンのツーリング専用に使ってるという人も少なくないそうです。ですが、その理由はわかる感じがします。
しかし、オフでの扱いやすさを最重視したセローの場合、オンだと足の柔らかさが仇となってしまいます。サスが沈みすぎて、舗装路でバンクさせると不安定な挙動になってしまうのです(※あくまでオンロードバイクとの比較の話)。また、8Lというタンク容量の少なさもロングツーリングの場合は欠点。せっかくの好燃費なのにロングツーリングすると給油回数は4気筒のスポーツバイクと大差なし。
セローのメインステージはやはりオフ。オンではやっぱイマイチな所もなぁ・・・。
と、ここでようやくYBRの出番になるわけです。
■リアル大陸横断系バイク
このバイク、個人的には「セロー系のエンジン積んだオンロードバイク」というのが最大のポイントだと思います。なので「セローでオンロードは実は楽しい」ということに気づいた時から、私の中でYBRの株が急上昇しました。
実際試乗してみると、セロー系空冷250単気筒FIとオンロードの車体の組み合わせは思った通り良いです。といっても、やはりレブまでぶん回して面白いというタイプではなく、低回転を繋いでいく走り方が一番ハマります。2〜3000回転くらい、ストール二歩手前くらいの低回転でトルクを生かしてドコドコッっと巡航していくと、疲れ知らずでどこまでも行けそうな感じがします。
しかも、こいつにはセローでツーリングしてる人にとっては誰しもが悩みの種だったことが解決されています。それは・・・・
燃料タンク容量:19.2L
250cc空冷単気筒で19.2Lて!
私のXJ6(水冷4気筒600cc)のタンク容量は17.3Lです。これでも割と入る方ですが、これは250cc単気筒なのに19.2L。仮に燃費が30km/Lとすれば、航続距離は単純計算で576km。いや、このエンジンならもっと燃費伸びるだろうから、下手すりゃ東京青森間無給油だって夢じゃありません。以前Ninja250Rが出た時、連続400km以上走れてスゲーとかいう話がありましたが、YBRは更にその上を行きます。北海道を走るのに二日間くらい無給油でも全然行けるわけです。
なんなの?大陸横断でもするつもりなの?バカなの?(良い意味で。)
そういえばこれ元々中国や東南アジア向けのバイクでした。リアルに大陸を走るためのこのタンク容量なのかも。
大陸横断といえばBMWのGSとかスーパーテネレとかが代表的な車種として出てきますけど、実際大陸方面でそんなのに乗ってる人なんて人口比で言うとごくごく少数しかいません。YBRは今現在、リアルに大陸をバリバリ横断してるバイクなのです。
■荷物を積んで走るのがデフォルト?
オンロードモデルなので、サスは当然オンを走るためのものです。街中の試乗では、セローでオンを走った時の様に柔らかすぎて不安ということはありません。カーブも軽快に曲ってくれます。
細かいこと言うと、何故かリアサスが少し突っ張る感じがしましたが、考えてみりゃ元々これ、バイクにしこたま荷物載せるアジアの人々向けのバイクです。荷物だけじゃなく人もそう。タンデムはあたりまえ、中には三人、四人乗りしてるバイクも。おそらく最初からリアにそれなりの重量物を積むことを想定してこのセッティングなのかもしれません。リアショックは調整可能ですので、気に入らなければ調整すりゃいいですが、個人的にはこのバイクの場合、普段から箱を積んだり色々積載して走りたい感じです。
中国製で全体的なクオリティが低いことが心配な人もいるかもしれません。というか、値段が値段なんで実際安っぽい所は結構あります。タンクキャップはガソリン缶のフタみたいだし、レバーとかのタッチも価格相応な感じ。でも、このバイクを買う人はそういう細かい点は気にしないでしょうし、バイクを自分で弄る人なら問題無いレベルでしょう。ガンガンに使い倒して壊しても大陸方面でバンバン走ってるからパーツは豊富ですし、全国のYSPが販売してるのでサポート面も問題ありません。
■北海道最強(?)
安いバイクでサポート充実となると、多少無茶しても平気だなと思えてきます。
ここがこのバイクの真骨頂です。武器で例えて言うならAK47。旧共産圏のゲリラが、中東の砂漠で砂が入ろうが、南米の密林で泥が入ろうが、命中精度なんざ気にせずバカバカ小銃をぶっ放すかの如く、ガンガンに使い倒すべきバイクです。
下手に飾りっけも無いから、立ちゴケしても心も財布も痛く有りません。パーツが取れたらシリコンシーラントか何かでくっつけときゃいいんです。空冷単気筒のシンプルな造りだからメンテしやすいし、125の方なら純正でキャリアがついてくるから、ホームセンターの箱載せれば即激安ツーリング仕様の完成です。コケても平気だからフラットダートぐらいなら持ち込んでも何ら心配ありません。
燃費最高、航続距離最高、多少のダートも平気、荷物の積載もOKとなると北海道最強なのはBMWのドイツ製GSアドベンチャーではなく中国製のYBR250ということになります(?)。北海道の道の駅で、ニーハンや原二を前にして「へぇ〜そういうバイクでも結構走るもんだねー」とか上から目線でのたまうGS乗りの小金持ち(ちょび髭)が、ちょっとガレたダートの段差で立ち往生してる横を軽量ボデイを生かしてぶっちぎるYBRの姿を想像したらもうたまりません。しかもGSの容量33Lのビッグタンクに匹敵する驚きの航続距離ですから、給油中に抜かれる心配もなし。頭に来たGSが自慢のパワーを生かして追い付いてきた先に待っているのはK察のネズミ捕り。
ま さ に 下 克 上。
なんか、だんだん楽しくなって来ました(全部妄想だがな。)
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よく言われるライバル、CBR250RやNinja250Rの対抗馬として見ると、少し違う気がします。グローバル世界同時展開、高回転まで回る水冷エンジン、ABSなど、スポーティに、キッチリ、カッチリ作ってあるCBRやNinjaに比べると、YBRはもっとアバウトで色んな意味で気軽です。価格帯も違うので案外別路線のバイクな気がします。